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 タイムドメインは研究所創立以来、良い音を求めて研究を続けています。
 基本となる理論技術の1つは「時間領域」の考えです。
 一連の記事は「ラジオ技術」誌83年7−10月号にに連載したものです。「時間領域」について分りやすく書かれていますので、再録しました。
 10余年を経ていますが、周囲情勢だけを時代に合わせて読み替えていただけば、理論と技術はそのまま通用しますので、原文には手を加えず、以後の新しい資料や解説は本文中にリンクしておくことにしました。(980904)
 高忠実度再生への新しいアプローチ(3)

全域抵抗制御をねらった新しいウーファーの提案
「ラジオ技術」 83年9月号より

磁力は強いほどよい
新しいウーファ方式の提案
板振動によるリバーブ(残響)ひずみ

リバーブひずみをなくすには

新しいシステムの成果は




磁力は強いほどよい

 低域については、スーパーウーファSL-1を開発した時、ずいぷん勉強しました。発売して2つの実感を得ました。
 1つは日本人(東洋人)は低音への関心が低い、ということです。音楽でも高音の旋律部だけを聴いて、通奏低音など低音部はちゃんと聴いていないようです。良いものを聴けば、その必要性やすばらしさは理解できるのですが、みずから求めるほどではないようです。
 第二は、スーパーウーファを生かすことができる、良い低音特性のシステムが少いことです。もともと良い低音特性のシステムにスーパーウーファをつないだ時、素晴しい効果かあるのですが、たいていは超低音が出るというだけの効果で満足されているようです。
 いま超高忠実度音楽再生という目で従来のウーファ・システムを眺めますと、過渡特性に特に不満があります。比較的過渡特性の良い密閉箱方式について考えてみます。システムの低域特性はQによって決まるのですが、従来はf特の平坦性から0.7〜0.9くらいが推奨されて来ました(第1図)。

第1図 ウーファのQとf特第2図 Qと過渡特性の従来の説明

 また第2図の説明図があって、Q=0.5が臨界制動で、Qがそれより大きいと振動的になるが、f特と振動のおさまりから見て、やはりQは0.7〜0.9が良いとされていました。
 この値より磁力を強くすると、Qが下がり過ぎて過制動になり、動きが悪くなると説明されていたのです。従来のシステムはこのように設計されていたのですが、ここに問題があります。
 まず、磁力が強くなるといけない、というのが直感的に気に入りません。
 また第2図には、コーン紙の動き=音圧という誤解もあるようです(6月号第10図参照)。運動の微分方程式を解いて、変位、速度、加速度を求めると、第3図になります。変位のおさまりは0.7くらいが良いようですが、音圧に相当する加速度や速度はそうでないことがわかります。Qが小さいほど過渡特性は良さそうです。

第3図 ウーファのQと過渡特性に対する正しい考え方

 Qが小さいと、付近の音圧が低下しますが、これは別に補償してやれば良いことです。もっとも、Qが大きくて音圧が高いといっても、これは持続音についてだけいえることで、短い音については立上りが悪いため、かえって小さく聴こえるはずです。

新しいウーファ方式の提案

第4図 ウーファに関する新しい考え方の原理
第5図 電磁制動抵抗R0を十分大きくすればひずみは小さく過渡特性は良くなる

 新しい方式の考え方を第4図に例示しておきます。磁石を強力にすると、過渡特性が良くなるばかりではなく、従来の物理量であるひずみも減ることになります(第5図)。
 ひずみの多くはサスペンションの非直線性によって発生します。磁石を強力にして、全インピーダンス中にサスペンションのインピーダンスが占める割合を相対的に低下させてやれば、サスペンションひずみの占める割合も低下し、ひずみ全体が減ることになります。
 別のいい方をすれば、ダンパーやエッジが少々つっぱろうが、強力磁力による駆動力と制動力で信号どおりに動かせる、というわけです。試作のためのシミュレーション例を第7図に示します(第6図は従来方式)。
 電磁制動によりインピーダンスが大きいので、仮にf0において支持部が10%ひずむとしても、結果は1%ひずみにしかならないことがわかります。第6図の従来方式では3%となります。

第6図 従来の考えかたによる
Q=0.7のウーファ諸特性
第7図 Q=0.3のウーファ諾特性
抵抗制御領域の広さに注目!

 また新方式では、従来直接放射型では存在しなかった抵抗制御領域が、4オクターブもの広い範囲で存在することもわかります。
 改善著しい位相特性や群遅延特性等から、このシステムが従来システムと次元の違う音を再生すると予想できます。試作システムでは第7図の慣性制御領域にショート・ホーンの負荷をかけて抵抗制御に変え、結局ウーファ全帯域を抵抗制御にしてしまいました。
 試聴しますと、やはり今までと次元の異なる低音です。
 低音楽器の音がすべて本物になります。コントラバス、チェロ、バスドラの音等、今まで良く似て同じように聴こえたのが、はっきりそれぞれの音になります。コントラバスのひと弓ひと弓の音の違いがよくわかります。もっと客観的には、コントラバスのスピカート等で、音がハーモニカ的につながってしまっていたのが、ダダダダと分れて聴けます。前号で述べたように、音楽が上等になるのはもちろんのことです。
 低音域の遅れ感に注目して試聴し。聴感どおりに従来のシステムを並べてみました(第8図)。感じとしては等間隔ですが、試作システムだけは特別でまったく遅れ感はありません。それぞれのインパルス応答から群遅延特性を求めてみますと、聴感とピッタリ合致します。

第8図 低音の遅れ感と群遅延特性第9図 パネルの振動と防振の効果

板振動によるリバーブ(残響)ひずみ

 従来とは桁違いに過渡特性の良いユニットや方式が採用されると、次は箱やホーン材料の振動が問題となります。
 振動は周波数領域のひずみにはなりませんが、時間領域ではひずみとなり、音楽を害します。
 第9図のように尾を引きますので、リバーブひずみと呼びたいと思います。リバーブひずみは、多い時にはf特に少し現われますが、高調波ひずみとしては検出されず、従来の正弦波測定ではわからないひずみです。
 部屋の残響もこれとよく似てますが、これはもとの信号との時間差が大きいことと、主信号と異った方向から来ること等から、はっきりと残響として聴き分けていますので、こちらは従来どおり残響と呼べば良いと思います。システムの中で生じ主信号と区別のつき難いものを、ひずみとして扱いたいと思います。リバーブひずみは、6月号で定義したマルチパス・ゴーストひずみと同様に音楽を害します。音の分離が悪くなる、音色差がなくなり混変調ひずみ的に音が濁る、音像定位を悪化させる、等です。従来のシステムにおいては、かならずしも不快なものではなかったので問題にはしなかったし、かえって下手なカラオケがエコーを必要とするように、適当に活用していたともいえます。

リバーブひずみをなくすには

(1)防振
 最も大きなリバーブひずみは箱で発生します。
従来は補強をしたり、材科や形を調整して、聴感的にまとめていたようです。結果として直接スピーカから出る音に対して箱からの音は、一般に、-15dB〜25dBくらいになっていました。
 リバーブひずみ5〜20%ということになりますが、信号が消えた部分に存在するひずみですので、聴感的にはもっと大きな値に相当します。補強をしますと、こちらを押さえ込めばあちらが上がる、エネルギーを吸収しませんので、シーソー・ゲームです。振動の調整はできても、なくすことはできません。
 第10図は板厚を変えた例です。fパターンをシフトして調整することはできますが。これも根本対策にはなりません。
 超高忠実度音楽再生のためには、リバーブひずみにおいても従来とは桁違いの要求がされます。
 従来の方法ではなく、振動エネルギーを吸収する方法を考えねばなりません。
 第9図を見てください。ABCが従来の状態でCはその極限でしょう。よほどのマニアでないとCまではできないと思います。振動エネルギーを吸収することを考えて、新しく開発したダンピング材を貼ったものがDです。レベル、時間差ともに大幅な改善ですが、まだ不満です。ダンピング材に鉄板等の拘束材を加えたのがEです。これなら完全です。これは鉄橋の梁等を防振する方法からヒントを得ました。A〜Cの従来データに比して桁違いの改善です。

第10図 箱の板振動。板厚が1.5倍になりfパターンも1.5倍高い方へずれる第11図 累積スペクトルによるホーン材の吟味

 ホーンも同じ方法で防振します。
第11図は改善されたホーンの例です。全時間的f特(t=0)が同じでも、過渡音が異なることは、もうご説明するまでもなく理解いただけると思います。
累積スペクトラムは、信号を頭から順々に切り捨て残った部分の周波数スペクトラムを3次元に並べたものです。したがってt=0のf特は全時間的f特であって、t=0の時の瞬時f特ではありません。すなわちt=0の時にはまだ発生していなかった成分も、t=0のカーブに表示されます。t=0にその音が存在していたように誤解し勝ちですので、ご注意ください(第12図)。

第12図 時間解析の違いでデータの現れ方はかなり違う

(2)ボックス内の吸音
 スピーカ・ボックス内の吸音も、従来程度では不満になります。
 箱内に生じる定在波のモードと周波数を計算すると、実測値とよく合致します(第13図)。有害な成分とそのモードがわかれば吸音材で消すことができます。
 従来、吸音材は箱の内部の壁に貼り付けていましたが。これでは十分の吸音効果は望めません。1枚の吸音マットを箱の壁に貼った場合と、中央部に置いた時の吸音効果を比較しますと(第13図)、壁に貼ったのはほとんど利いていませんが、中段に置いたものはその位置が節となるモードに強力に有効です。
 壁は音圧は高いが、空気は動きませんので、ここに吸音材を置いても無意味です。
 音圧の節の位置では音圧はないのですが、空気は激しく流れていますので、吸音材は有効に作用します。定在波の節、すなわち音のいちばん小さな所に吸音材を置く、反常識的ですが合理的です。箱いっぱいに吸音材を詰めるのがベストなのは、いうまでもありません。また、定在波を防ぐ有効な方法として、リスニングルーム同様、壁を斜めにする方法も採用すべきでしょう。

第13図 箱内部の空気の振動モードと吸音効果
第14図 リバーブひずみの違い

新しいシステムの成果は

 このような時間領域について検討されたシステムの例を、第14図に示します。
 このようなシステムで音楽を聴いて見ると従来のシステムがいかに忠実度不足であったか、ということが痛感されます。マルチパス・ゴースト、リバーブ等もろもろのモヤモヤひずみが消えると、今まで埋もれていた音楽がくっきりと浮かび出ます。
 再生においては、従来常にスピーカ・システムがネックとされておりましたが、こうなると違います。カートリッジを替えればそのカートリッジの音がそのまま、アンプを替えればそのアンプの昔がそのまま、聴こえます。ディジタルとアナログの差もよくわかりますし、コンパクト・ディスクもまだまだ“理想の”とか“夢の”とは呼べないものであることもわかります。今まで見えなかったソースの欠点もよく見えるようになりますが、同じ理由で、こんな素晴しい音楽がディスクに入っていたのか、とオーディオの限界について考えを改めます。(つづく

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